はじめに:50代フリーランス、仕事と人間関係を見直すとき
50代、フリーランスとして3年が以上が経ちました。人生の折り返し地点、身体の変化や更年期による気分の浮き沈みと向き合いながら、「どうすれば心地よく働けるか」を日々模索しています。更年期をきっかけに「やめたこと」が増えたように、仕事における人間関係も、これからはもっと軽く、自分軸で調整していきたいと思っています。
そんな私がここ数年で出会ったのが、あまりにもドライな若手経営者たちです。彼らの「即決・即断・即撤退」という合理性は、私たちの世代には時に戦慄するほど冷酷に映ります。しかし、このヒリヒリした体験から、50代の私たちが明日を楽に生きるための「仕事の微調整」のヒントが見えてきました。

【この記事の主な内容】
・ミスをすると即アウト?「見切りの早い社長」
・社員数まで秘密?「情報に敏感な社長」
・正論を言ったら仕事終了?「自分のルール優先の社長」
50代フリーランスが直面した、若手経営者たちの圧倒的なドライさ
昔の人間からすると、「時間をかけて信頼関係を築く」「多少のミスマッチは話し合って修正する」というのがビジネスの基本でした。しかし、いまどきの若手経営者たちは違う。「人も会社も見切りが早い」のです。
今回は、私が実際に仕事を通じて出会った、強烈な個性を持つ3人の若手社長たちのエピソードをご紹介します。
一人目:1回目のミスで「一発レッドカード」の洗礼と会社売却の背景
最初に驚いたのは、あるIT系の若手社長でした。
初めての納品後、「イメージ通りでした!」と熱いメッセージをくれたのです。
私もすっかり気を良くし、「この会社なら長く腰を据えて信頼関係を築けるわ」と胸を躍らせていました。
ところが、人間、ちょっと気が緩むと失敗するものです。2回目の納品で、私のリサーチ不足から少し方向性がズレてしまったのです。「次に巻き返せばいっか」と呑気に構えていたところ、そこからピタリと連絡が途絶えました。
こちらから恐る恐る状況を尋ねると、返ってきたのは「社内で検討した結果、しばらく新規の発注は見合わせます」という、あまりにも事務的で冷徹な一通のみ。 あの好意的な言葉は一体どこへ行ったの? とツッコミを入れる間もなく、関係はジ・エンドです。
後から聞いた話では、その社長はなんと学生時代に一度会社を売却している経験の持ち主だったそうです。
ビジネスを「育てて愛着を持つもの」ではなく、「価値を測って流動させるもの」として捉えている世代。そう考えれば、会社ですらサクッと手放せる彼らが、目の前の人間関係やパートナーに対しても、すぐに見切りをつけるのはごく自然なことなのかもしれません。
彼らにとっての信頼とは、時間をかけて蓄積するものではなく、目の前の結果だけで常に更新される「査定」そのものだったのでしょう。「関係を修復する」という大人の対話のステップなど、最初から彼らの辞書には存在しなかったようです。
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二人目:『VIVANT』の国家機密みたい?社員数を絶対に口外するなと言われた話
また別の若手社長のもとでの仕事は、別の意味で肝が冷えました。契約の締結時、彼はまるでスリラー映画のワンシーンのように真剣な顔つきになり、私にこう釘を刺したのです。
「絶対に、うちの社員数は外部に口外しないでください」
そのトーンは、まるでドラマの『VIVANT(ヴィヴァン)』で国家機密でも扱っているかのような緊迫感。こちらが口止めされているのは国家機密ではなく、社員数なのですが……。
あまりの念の押し方に、私の脳裏には『VIVANT』のあの緊迫したシーンまで浮かんできました。
「もし、うっかり口を滑らせたら……私もあそこから落とされるんじゃないでしょうね?」
もちろん、そんなことが起こるはずはありません(笑)。でも、それくらい「絶対に漏らすな」という圧がすごかったです。

競合他社に手の内を見せたくないのか、あるいは「実態以上の大きな会社」に見せたいという必死のブランディング戦略なのか。社員数というたった一つの数字にそこまで過剰に怯える姿を見ていると、常に世間からの視線や「勝たなければならない」という強迫観念を背負っている若い世代の焦りが透けて見えました。
ちなみに、その会社の社員数は、おそらく20人弱だと思います。
20人も雇用しているなんて、堂々と胸を張っていいことだと思うんですけどね。
おばちゃんの感覚からすれば、「そこまでピリピリして、胃に穴が空かないのかしら……」と、なんだかこちらまで息が詰まる思いがしたものです。
参考リンク
『VIVANT』公式サイト(あらすじ)
三人目:正論ですら「排除」される若手社長の合理性
そして、一番「戦慄」を覚えたのが、あるシステムの不備を指摘した時のことです。 その会社が導入していた業務システムは、なんとデータを入力しても保存されず、画面を切り替えるとすべて消えてしまうという、とんでもない欠陥仕様でした。このままでは私だけでなく、他の業務委託の皆さんの労力もすべて水の泡になってしまいます。
見かねた私は、「おせっかいおばちゃん」の血が騒いだのか、良かれと思ってこう進言したのです。 「このままでは作業したデータが消えてしまうリスクがあるので、一度システムを見直された方が良いのではないでしょうか。顧客にも迷惑をかけますし、こちらは責任が持てなくなってしまいますので……」
……しかし、その瞬間からでした。私への仕事の依頼は、音沙汰もなくプツリと途絶えたのです。そしてグループチャットから一人だけ外されてしまいました。
後になって痛感したのは、彼らにとっての「システム」や「ルール」は、たとえ穴だらけの欠陥品であっても、自分たちが決めた絶対的な正義だということです。そこに外部の人間から「正論」で指摘されることは、業務改善のための親切心ではなく、「自分たちのやり方に異を唱えるノイズ」でしかなかった。だからこそ、面倒な議論をする暇があったら「別の従順な人に換える」という、秒速の切り捨てが行われたのです。
「良かれと思って力になろうとしたのに、一言の相談もなく即クビ?」 あまりの合理性と冷徹さに、私はしばらく呆然とパソコンの前で固まってしまいました。
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まとめ:50代の仕事と人間関係をラクにする「軽やかさ」の処世術
若手経営者たちのあまりのドライさに最初は面食らいましたが、こうして振り返ってみると、彼らに共通するのは「期待値の調整を放棄し、代わりを探すスピード感」です。
私たちの世代が「時間をかけて分かり合うこと」や「育て育まれること」に価値を見出すのに対し、いまどきの若い人たちは「今の環境にマッチするか否か」「会社に貢献できる人間か」を秒単位で判断しています。合わなければ切り捨てる。効率が悪ければ入れ替える。そこに「情」というノイズは一切入り込みません。
もちろん、寂しさはあります。「もう少し話し合えば、お互いもっと良いものが作れたのに」と思うこともゼロではありません。しかし、翻って考えれば、彼らはその「見切りの早さ」で生き残ってきたとも言えます。しがみつくことも、無駄な執着をすることもせず、ただ淡々と合理的な判断の積み重ねで事業を回している。
そう気づいたとき、50代の私たちが、このドライな世界で無理なく生き残るコツが見えてきました。
それは、相手の冷徹な合理性に、いちいち感情を振り回されないことです。相手に「もっと分かってほしい」「もう少し人情があってもいいのに」と期待しすぎない。かといって、冷たい対応をされたからといって、すぐに「もうこの人とは付き合わない」と見切る必要もありません。
彼らが切るのは、あくまでその時の「タスク」や「役割」であって、私自身の人格を否定しているわけではない。そう大きく構えて、ダメなら「あ、今回は縁がなかったね」と笑い飛ばせばいいのです。
「あー、終わった終わった。次行こ、次!」
そんなふうに、彼らと同じくらい軽やかに、華麗に次の仕事へ切り替えていく。酸いも甘いも噛み分けた50代の経験値と、若者たちの持つ「執着のなさ」。この両方を面白がれるようになると、案外、このドライな現代社会も気楽で居心地の良い場所に変わっていくのかもしれません。
最後に、ここで紹介した3人の若手社長については、あくまでも私が実際に出会い、一緒に仕事をした中で感じたことを書いたものです。もちろん、すべての若手経営者が同じ考え方をしているわけではありません。
世代が違えば、仕事に対する価値観や人との距離感も違います。私自身、彼らの「即決・即断・即撤退」という姿勢に戸惑いながらも、そこから学んだことは少なくありません。大切なのは、どちらが正しいかを決めることではなく、「こういう考え方もある」と知ったうえで、自分に合う仕事の距離感を見つけることなのだと思います。
今日も私は、新しい案件を探しながらお茶をひと口。まあ、見切られたら切られたで、また新しい面白い出会いが待っている。それこそが、フリーランスという自由な生き方の、いちばんの醍醐味なのですから。

